パン屋になりたい、できればメロンパンの

音楽、バンドについて語らせて

6.「交感ノート」アイドルネッサンス

6回目はアイドルネッサンスというアイドルの「交感ノート」という曲について。1か月ぶりくらいの更新。今までバンドばっかりだったのでアイドルについても語りたい。

 

まず「アイドルネッサンス」について、2014年から2018年まで活動した女性アイドルグループである。BaseBallBearと同じソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)という事務所に所属していた。このグループが他のアイドルと一線を画していたのが自分たちの持ち曲があるわけでなく既存の名曲(特にバンドの曲)をカバーすることを基本としている点である。名曲をルネッサンス(復興)させるというコンセプトのためこの名前となった。元々バンドで歌われていた曲が彼女らにカバーされることでまた違った味が出ている。アイドル特有の重厚な声のハーモニーが心地よい。第1回で紹介したBaseBallBearの「17才」のカバーを1stシングルとしてリリースしている。

youtu.be

 

このグループは小出氏がプロデュースに参加していて他にもベボベの「changes」や「恋する感覚」などもカバーしている。ベボベ以外にはthe pillowsの「Funny Bunny」、KANA-BOONの「シルエット」、supercellの「君の知らない物語」などをカバーしている。このようにカバーを繰り返していたが、2017年にオリジナル曲のみの4曲入りミニアルバム「前髪が揺れる」をリリースする。そのミニアルバムの1曲目が今回紹介する「交感ノート」である。そしてこのミニアルバムの4曲すべてを作詞作曲編曲したのが他でもないベボベの小出氏である。

 

普段ベボベはギターベースドラム以外の楽器を使わないことをある種決まり事として曲を作っている。シンセっぽい音はギターに空間系やピッチシフターなどのエフェクターをかけているものである。ベストアルバムに収録されている「若者のゆくえ」(ベースの関根がピアノ、ギターの湯浅がベースをそれぞれ弾いている)や湯浅脱退後の1枚目のアルバムの「光源」(シンセやピアノサウンドが多用されているがギター主体ではある)などの例外はあるが、それ以外はすべてメンバーのサウンドのみである。「交感ノート」はそんな小出氏が作ったにもかかわらずギターが一切入っていなく打ち込みっぽいドラム、ベース、シンセ、エレピのみで構成されていて新鮮である。曲もいい意味でベボベっぽくなく小出氏の器用さが感じ取れる。コード進行はめっちゃベボベだが。しかしのちに小出氏はラジオでこのアルバムの制作が人生で3番目以内にしんどかったと言っていた。やはり他人に曲を作ることは大変なのだろうか。

 

歌詞は朝の踏切待ちで好きな人に遭遇したが声をかけられない、といった甘酸っぱい青春ソングである。「ああ 踏切が開かなくて君と横に並んだ」「君に伝えたいよ いや、やめよう まだまだ 今じゃない 」などとピュアな歌詞が続く。サビが掛け合いになっていてアイドルソングとしても完成度が高い。1番サビの終わりの「君に伝えたいよ 私がここにいること」というフレーズが2番では「僕がここにいること」ラスサビでは「私が/僕が ここにいること」と変化しており聴き手の想像が膨らむ構造にもなっている。またベボベでも見られるような豊かな情景描写が随所に見られ全体的に美しい歌詞となっている。「風が騒ぎ みどり色の匂いがしました」「授業中に遠くから見てたその横顔に髪がかかり 初夏の陽射しに透き通り」この歌詞を10代のメンバーが歌うことでさらに綺麗さに拍車がかかっている。小出氏すごすぎる。

 

余談だがアイドルネッサンスのメンバーだった「石野理子」はグループ解散後の2018年に「赤い公園」というバンドに2代目ボーカルとして加入している。その経緯は赤い公園のギターの津野米咲ベボベのサポートをしたことから始まる。ベボベは2016年にギターの湯浅が失踪してしまい、その後しばらくはサポートギターを招き入れライブをしていた。その一人が津野である。そして赤い公園のボーカルの佐藤が脱退した際、その時の恩返しとして小出氏が赤い公園に石野を紹介した、というエピソードがある。またまたその後2020年にギターの津野が亡くなった時に小出氏が赤い公園のサポートをし、それから小出氏がベボベのライブでも津野が使用していた茶色のストラトをメインのギターとして使うようになったという。なかなか泣けるエピソードである。

 

最後まで見てくれた人ありがとうございます。アイドルネッサンスというより小出氏について語る感じになっちゃった。やっぱベボベが最高。赤い公園も最高。石野理子はつい先日結成が発表された新バンドAooo(アウー)にボーカルとして参加している。ボカロpのすりぃがギター、ツミキがドラム、YOASOBIのサポートのやまもとひかるがベースという凄バンドである。9月に初ライブあるらしいが東京なので行けません。